情報系の手考ノート

数学とか情報系の技術とか調べたり勉強したりしてメモしていきます.

自分流・英語論文を読むコツ

修士の研究を通じてそれなりに英語論文を読んできた私ですが,さすがに学部から修士にかけて論文を読んでいるとある程度ノウハウのようなものがたまってきたかなと感じています. というかニューラルネットワーク関係の研究だと日本語の論文なんてほとんど見ないので,実質的に英語論文を読む選択肢しかないです. おかげで日常会話で使う英単語は知らないのに,専門用語はやたら知ってる変なやつになりました.

また最近知人が英語論文を読むことになったものの,どう読んでいいかわからないということを言っていました. たしかになにも知らずに読み始めるのは大変だろうと思うと同時に,英語クソザコマンである私が培った読み方のコツのようなものも,メモしておけば誰かの役にはたつだろうとも思いました. そこでこの記事では,私が培った英語論文の読み方のコツ?のようなものを書き連ねていきます.

内容の方向性

この記事では,1つの論文をどうやって読めばいいかという点にのみ言及します. 研究する課程で論文を読むなら,その分野の動向などを良く知る必要があるわけですが,私はその手の調査がアホみたいに苦手なので言及しません. 言及してマサカリを投げられたくないので.

どちらかというと,始めて英語論文を読むけど英語が苦手だという人が,どういう点に気をつけて読むと良いか,というような内容になります. ザ・入門向けという感じです.

タイトルはちゃんと読め

第一にこれです. タイトルはちゃんと訳して意味を頭に入れておきましょう. 論文を読みながらタイトルの意味を考えるようにすると理解が深まります. なんなら理解の助けになったりもします.

論文のタイトルは著者らが自分の研究を短かく,そして適当に要約したものです. それをよく読まずに本文に目を通すのは愚の骨頂と言えるでしょう. 私はせっかちなので最初の頃はふわっと読んで,本文を読むときはほとんど頭から抜けおちていましたが,あとからタイトルを見て理解が深まったことが多々ありました. 当時ちゃんとタイトルを頭に入れつつ本文を読んでいたならば,無駄に悩む箇所が減って,結果的にもうちょっと早く論文を読めていたと思います.

Abstract や Conclusion を先に読むとわかりやすい

これはタイトルを読めという話と近い内容です. 論文にはほぼ必ず Conclusion,もしくはそれに類する節や章があります. 論文内のどこにあるかは分野によってまちまちですが Conclusion の名の通り,論文のまとめが書かれています. この節には,著者らがどういう背景の下でどういう実験を行い,どんな結果が得られたのかが要約されています. 極端な話論文の全部と言っていいです. この Conclusion について補足しているのが他の節や章だとすら言っていいかもしれません. ここを読んでから,どんな結果だったんだろうと実験の章を見にいってもいいし,提案手法のアプローチは具体的にどうなっているんだろうと対応する章を見にいってもいいです.

そして全体像が掴めていれば,慣れない英文もいくらか,というよりかなり読みやすくなります. 人間,文章を読むときは文脈が大切です. 日本語を読むときだって,なんの話をしているかわからずに読むのと,これからどんな話がくるか予測できている状態で読むのとでは理解のしやすさが段違いです. 日本語ですらそうなら,慣れない英語では尚重要です. そんな全体像を掴むという作業が Conclusion を読めば一発でできるというわけです. 読まない手はないでしょう.

さらにほとんどの論文には Abstract というものがあります. これは Conclusion をもっと要約したようなものだと思えばいいでしょう. Conclusion と同じ理由で Abstract を読むことは非常に重要です. さらに Abstract は Conclusion より短かいことがほとんどです. つまり英語苦手ニキネキからすれば,読みやすい上に全体の流れを掴めるという意味で非常に価値があります.

というか論文を探すときは普通,Abstract を読むと思うので書くだけ無駄かもしれない内容です. ただ教員から読めと渡された論文なんかは,つい Abstract を読まないなんてこともあるかもしれません. そういうときにも焦らず Abstract を読むことで,結果的に無駄に悩まずに論文読解を進められることでしょう.

図表のキャプションは結構意味がある

私には以外だったのですが,論文内にある図表のキャプションはかなり重要です. 昔レポート課題などで図表を書いたとき,キャプションは"○○の図"くらいしか書いてませんでした. ですがちゃんとした論文のキャプションは違います. その図表の見方くらいは書いてあります. 見ればその図表からある程度実験内容を推測したり,軽く考察をできたりもします. 私のような底辺学生が書くレポートとは話が違うわけです.

上でも述べましたが,文章の全体像を掴むというのは,素早くかつ無駄に悩まずに論文を読む上で非常に重要になります. 図表のキャプションは,文の全体像を掴むことに一役かってくれます. スライドを作るときにも意識することでしょうが,文を読むより視覚的にわかる図の方がぱっと理解できたりすることが多いです( こんな文だらけの記事を書いているやつが言うことじゃないですが…). その意味でも図表のキャプションを読み,直感的に内容を理解しておくことでその実験や手法の理解の助けとなることが多いです.

私は無駄にせっかちだったのと自分がキャプションをちゃんと書いていなかった経験から,最初はキャプションを軽視していましたが,後でキャプションを読んで"なんだそういうことか"となったり,"この理解であってたんだ"となったことはたくさんありました. 英語を読むのが面倒だなんて理由で,キャプションを読まずに飛ばすにはあまりに勿体ない,というのが現在の私の考えです.

わからない箇所は無理せず飛ばせ

そのままです. わからない箇所を無理に読む必要はありません. 英語の論文を読んでいて,特定の文や段落の意味を理解できない場合は大きく2つの場合に分類できます. 1つは英文の訳し方に問題がある場合です. これは翻訳にでもかければ簡単に解消されます. 1つも翻訳ツールでなく,複数の翻訳ツールを使うことでこの問題はより発生しにくくなります(これはアンサンブル学習と近い理屈です).

問題はもう1つ,そもそも意味を理解できる状態じゃないという場合です. 論文を読むためには,どうやったってある程度高度な知識を要求されます. 読者の持つ前提知識が足りなければ,どんなに正しく訳したところで理解できるわけがありません. そんな状況で無理に理解しようとそこで立ちどまるのは時間の無駄でしかないでしょう. しかしその文が重要な箇所であったりすると,理解を諦めたまま放置するわけにもいかなくなります. ただその箇所の理解は1度全体を読んだ後でも十分で,最初に完全に理解する必要はありません. というかだいたい数回読み直すはめになります. ある程度前提知識があれば,全体を軽く読んでからわからなかった箇所を読み直すと簡単に意味がわかったりします. 無駄に同じところで詰まらずに,とりあえず先に進んでしまうというのが効率良く読みすすめるコツになります.

ただそもそもその論文を読むための前提知識が足りない場合があります. そういう場合はその論文だけでなんとかするのは無理です. 人に聞くなり他の文献を漁るなりして前提知識を付けるしかありません. この場合,引用している参考文献を漁ってみると欲しい情報が書いてあったりするので,そこは意識しておくといいかもしれません.

論文は読みながらまとめておこう

これは読むコツとは少し違うかもしれないですが,書いておきます. 論文を読みながら自分で要約をしておくことで理解が深まり,かつ後の自分のためにもなります.

授業とかでも言えることですが,自分で要約をするのとただ聞いたり読んだりするのでは理解度が全く違います. 雑に要約するだけでも記憶に残りやすくなるので,やらないよりよっぽど良いなというのが個人的な感想です. ただしっかりと要約をしようとすると,自分が理解できていない箇所が浮き彫りになったりするのでより理解が深まります.

また研究をしていれば学部,修士に関わらず論文を書くことになるでしょう. そしてよほど先進的な研究でもなければ,論文には先行研究を書くことになります. そのときに自分でまとめていれば,そのコピペで最低限体裁の整った先行研究の章が完成します. あとはちょっと整形するだけです. これは後の自分を大いに助けてくれることになるでしょう. 実際私は非常に助けられました. また,まとめるという行為を日常的に行うことで,文章を書くのに慣れることができるというのも利点と言えるでしょう. TeX をあまり使っていなくて,論文では TeX を使う必要があるような場合は TeX の練習にもなります. そんな感じで論文を読みながらその手法等についてまとめるのは,理解を助けるという意味のみならず,未来の自分のためにも役に立ちます.

まとめ

これらが私が学部から修士での研究生活で身についた,論文を読む上で気にしている点です. ほかにもあるかもしれないですがまず思いつくのはこのへんです. 私のように英語が苦手だったり,無駄にせっかちだったりする人はこの記事の内容を意識して読むと,ちょっとは楽に読めるんじゃないでしょうか. そんな人の助けになれる記事になっていればうれしいです.

そして自分なりに"こうやると読みやすい!"ということに気づいたら即共有しましょう! 少なくとも1人くらいの助けにはなると思うし,なんなら私もそういう知識を知りたい…! みんな軽率に知識を共有しろ…